犬の胆嚢切除
検査結果
血液検査にて肝酵素値の上昇と黄疸(T.Bil 2.4)を、また、エコー検査にて胆泥が多量に貯留しており、胆嚢壁の肥厚を認めました。
稟告より中毒の可能性は低く、胆嚢炎として入院下にて内科治療を開始しました。
翌日、黄疸の悪化(T.Bil 9.0)とCRPの上昇が認められ、エコー検査にて胆嚢周囲の炎症が強くなっていたことから、胆管閉塞あるいは胆嚢や胆管からの胆汁の漏出が疑われました。そのため、試験開腹を行うことにしました。
治療方法
お腹を開けて腹腔内を確認したところ、十二指腸から見える胆管開口部における腫瘤は認められませんでした。
胆嚢は粘性の高い胆汁を多量に容れて腫れていました。
カテーテルチューブにて胆管の疎通を確認し、洗浄。その後、胆嚢を切除し閉腹しました。
術後の経過
手術翌日、肝酵素値は高値を示していましたが黄疸の数値は下がっており(T.Bil 1.7)、日ごとに血液検査の数値も本人の一般状態の改善も認められました。
以降は、細菌培養検査の結果に基づいて抗生剤の投薬を行い、経過をみていきましたが、順調に回復していきました。
現在も一般状態は良好で過ごしています。
症例について
臨床的に黄疸が認められる場合には、肝内もしくは肝外にて胆汁のうっ滞を起こしている可能性があります。
肝外の胆汁うっ滞の原因としては、
・管腔内:胆石、胆汁塊の閉塞、炎症・腫瘍などによる狭窄
・管腔外:膵炎や十二指腸の炎症、腫瘍などによる外的圧迫
が挙げられ、血液検査やレントゲン、エコー検査などを併用しながら原因を考えていく必要があります。
原因によって、内科治療もしくは外科治療のどちらが適しているか変わるためです。
胆嚢摘出が必要になる場合として、犬では胆嚢疾患(粘液嚢腫、胆嚢炎)、胆管炎、胆石症、肝外胆管閉塞が挙げられます。
いずれの場合も緊急的な状況にあることが多く見受けられます。
疾病が悪化するまで臨床症状を示さないことも多々あるため、健康診断などで上記の疾患の予備軍ではないか、基礎疾患はないかなど調べておくことは有益だと考えています。
命に関わることもある病気ですので、定期的な健診をお勧めします。
淀川中央動物病院 獣医師 本田