消化管破裂による腹膜炎・敗血症
検査結果
血液検査にてアルブミンが著しく低下、好中球は減少、単球が増加していました。また軽度の黄疸とfPLIという膵炎のマーカーの上昇が認められました。
画像検査にて、レントゲン検査では全体にレントゲン不透過性が明瞭でなく、超音波検査では腸間膜など腹腔内の間質が高エコーを呈していました。明らかな腹水などは認められませんでした。
治療方法
この時点では、腹膜炎、膵炎、低アルブミン血症、また心疾患が認められました。
初期症状は1ヵ月前の誤食から始まっており、3日前から発熱しているため、異物の誤食が絡んでいる可能性も考慮しつつ、膵炎の治療から開始しました(輸液、抗菌薬での治療)。
半日ほどで発熱は治まりましたが、腸間膜組織を検査したところ、多量の好中球とマクロファージが採取され、細菌を貪食した好中球も多数認められました。
このまま内科治療を継続しても改善が乏しいと判断し、非常にハイリスクではありますが、麻酔下にて試験開腹を実施しました。
開腹すると、腹腔内に多量の膿と食渣を容れていました。また消化管は腫れており、腸間膜組織は壊死していました。
触診にて消化管を確認したところ異物は認めませんでしたが、回腸にて消化管が破裂した跡がありました。この部位にて内容物の漏れはなく、現在は周囲との癒着により閉じていました。
腹腔内を洗浄し、壊死した腸間膜組織を切除して閉創しました。
しかし、閉創している際に心拍数が急激に低下し、緊急処置を実施しましたが、2時間ほど後に亡くなってしまいました。
症例について
今回の症例は、1ヵ月ほど前に誤食したものにより消化管破裂→消化管内容物が腹腔内に漏出→腹膜炎・菌血症
手術により急激に腹腔内の細菌が血中に流れ菌血症に→DIC(播種性血管内凝固)に陥り死亡
という経過を辿ったものでした。
おそらく手術を行わなかったとしても、開腹した所見からは長く持たなかったと考えられ、回復する可能性を期待するのであれば手術は避けられなかった状況と考えます。
誤食は、外来でも非常に頻繁に遭遇するケースですが、やはり命に関わることがある非常に危険なものです。
飼い主さんの管理により避けられる場合もあるため、誤食癖のある子の場合は特に、気を付けて日々を過ごしてくださいね。
淀川中央動物病院 獣医師 本田